オルタナティブスペースとは?
小山さんの記事を読んで、オルタナティブスペースとはどういった存在であるのか?
という事を自分なりに再考しまとめてみました。
非営利性とコミュニティ志向
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商業的な利益追求よりも、主に芸術を通じた対話やコミュニティの形成を重視する。
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指標: イベントが非営利目的で開催されるか、参加者が芸術の実践者や関係者で構成され、対等な対話の場が提供されているか。
実験的・柔軟な空間利用
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固定された展示形式やルールに縛られず、自由で実験的な芸術表現が可能。
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指標: スペースが展示だけでなく、ワークショップ、ディスカッションなど多様な活動に対応しているか。また、物理的な空間がアーティストのニーズに応じて変化可能か。
アーティスト主導の運営
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キュレーターやギャラリストだけではなく、アーティスト自身が運営に関与することが多い。
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指標: 運営主体がアーティストや芸術に関わる実践者であるか。また、企画内容がアーティストの視点やニーズを反映しているか。
地域性と独立性
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特定の地域やコミュニティに根ざし、大規模な機関やアート市場から独立していることが多い。
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指標: スペースが特定の地域やコミュニティに根ざしているか、また、外部の商業的・制度的影響を受けずに運営されているか。
課題共有とネットワーク形成
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芸術を取り巻く課題(資金、空間、持続可能性など)を共有し、解決策を模索する場としても機能する。
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指標: スペースが、アーティストや団体が直面する実際的な課題を議論する場を提供しているか。また、ネットワーク形成を通じて新たなコラボレーションや支援が生まれているか。
個人的には、運営の主導が必ずしも芸術に関わる人ではなくても良いと思います。
現代の芸術が様々な専門性を持ち、例えば、プログラムやサーバーサイドのエンジニアの知識を伴う表現や農業、アニメ、etc..など広義の意味で含まれるようになって、恐らく、一個人が網羅できない程の細分化された現状であるのが理由です。
そもそも「オルタナティブ」とはラテン語の「alternare」(交互にする、代替する)に由来し、「既存のものに対する代替的な選択肢」を意味します。芸術におけるオルタナティブスペースでは、商業ギャラリーや美術館といった伝統的・制度的なアート空間に対する「別の選択肢」を指します。
既存の美術館や公共施設では出来ない「別の選択肢」を提供できる場所が、オルタナティブスペースであり、個人のやりたいことを起点にしながらコミュニティを巻き込み、持続的で影響力のある場となるためには、運営側が戦略的に取り組む必要があると考えてます。
特に、最低、「選定」「レビュー」「発信」の3つの視点が重要だと考えてます。
1. 選定(Selection)
目的: 個人のやりたいことを尊重しつつ、スペースの理念やコミュニティのニーズに合った企画や参加者を選ぶ。オルタナティブスペースの多様性と実験性を維持するため、選定は包括的かつ透明であるべき。
取り組み例:
オープンコール: 企画募集を公開し、幅広いアーティストや団体からの提案を募る。多様な視点を取り入れる。
多様な基準: 選定基準は商業的成功や知名度ではなく、企画の独自性、社会的意義、コミュニティとの関連性を重視。たとえば、地域課題を扱うプロジェクトや、実験的な表現を試みる提案を優先。
参加者の多様性: アーティストだけでなく、地元住民、学生、NPOなど非アーティストの参加も奨励。例として、地域の子供たちや高齢者を巻き込んだワークショップを企画。
実践方法:
選定プロセスを透明化し、応募者全員にフィードバックを提供。選定委員会にはアーティスト、運営メンバーを含め、多角的な視点で評価。
定期的なテーマ設定を行い、応募者がテーマに沿った提案を出しやすくする。
2. レビュー(Review)
目的: 開催した展覧会、イベントやプロジェクトを振り返り、成果や課題を評価・共有することで、スペースの活動を改善し、参加者やコミュニティとの信頼関係を構築する。
取り組み例:
振り返りミーティング: 参加者全員で振り返り会を開催。企画の成果(例: 新たなコラボレーションの芽生え)や課題(例: 資金不足、参加者間のコミュニケーション不足)を議論。
ドキュメンテーション: イベントの記録(写真、映像、参加者のコメント)をまとめ、アーカイブとして公開。たとえば、ミーティングの議事録や参加者の作品をウェブサイトやZineに掲載。
フィードバックの収集: 参加者や来場者にアンケートやインタビューを実施し、改善点を特定。例として、「もっと参加しやすい時間帯にしてほしい」などの声を反映。
実践方法:
レビュー結果を次回の企画に反映する仕組みを作る。たとえば、資金不足が課題として挙がった場合、次回のイベントでクラウドファンディングを導入。
レビュー内容をコミュニティと共有し、透明性を確保。たとえば、ウェブサイトやSNSでレビュー結果を公開し、外部からの意見も募る。
3. 発信(Dissemination)
目的: オルタナティブスペースの活動や理念を広く伝え、コミュニティや新たな参加者を巻き込む。発信を通じて、スペースの存在感を高め、持続的な支持を得る。
取り組み例:
SNS・オンラインプラットフォーム: XやInstagramを活用し、イベントの告知や成果をリアルタイムで発信。
実践方法:
たとえば、ビジュアル(写真・動画)、テキスト(ブログ・レポート)、インタラクティブな要素(ライブ配信やQ&A)を組み合わせる。
外部の協力者を巻き込み、発信力を強化。たとえば、地元のインフルエンサーやライターにイベントのレビューを依頼。
結局、何か良い取り組みをしたとしても、レビューが無ければその経験が積み重なっていかない。
ノウハウとしても関わった少数のみが得られても集団として蓄積されない。
更に言えば、理念とそれを共有する事が前提にあるのではないかと
実現する事のみにフォーカスをするのではなく、個人として、運営として、地域として、様々な視点からオルタナティブスペースがどのように機能していたのか?そういった問答や振り返りの機会があった方が良いのではと思う。
今、自分がオルタナティブスペースに関わっている立場から、自戒の意味も込めて記事にしました。
参照
REVIEW|無くならない、これからの活動のために——山中suplex シェアミーティング2「つぎつぎに (あつまっては) なりゆくいきほひ」