文化と芸術の定義について
はじめに
今回の記事を書くにあたって、視点として、地域(ここでの主体は行政)に焦点を絞ってます。
資料として下記を参照してます。
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000563_po_0628.pdf?contentNo=1
参考資料内に、芸術文化活動とは
という項目があります。
「芸術文化」と「文化芸術」という言葉の使い分けは難しい。基本法においては「文化芸術」という言葉が用いられているがその定義はない」を公表している。
との記載事項があり、この点で、国としての文化芸術の定義は明確になされていません。
前提として、定義は個人的なものになりますが、私の考えの根幹にある地域の特性(地政学、歴史、郷土、風習、etc...)をベースにして定義をしております。
昨年、ヨーロッパを旅した時に、大規模なギャラリーや美術館が、その国の歴史やアイデンティティを表現した展示が比較的多かったのに比べ、小規模なインディペンデントギャラリーでは、ネットなどの情報を通過したようなある種のグローバリズム(地域や国などの特徴などがあまり反映されてない)ベースな展示が多かった。
例えば、スイスのバーゼルで行われてるアートバーゼルの様式をまんま日本の地方に持ってきて開催するような芸術祭があったとして、その土地が育んだ、「価値観・伝統」「コンテクスト」が反映されてないケースが多く、その土地の持つ「文化」へのフィードバックが反映されにくい。
理想としては、「文化」と「芸術」がフィードバックループする環境を行政や文化芸術を表する組織が仕組みを提供する事ですが、一表現者の立場としては、あまりその辺りの「構造」と依存関係にならない事が重要かとも思っている。あくまでハンドリングするのは、仕組みを提供する側かとも思うので。
前置き長くなりましたが、僭越ながら下記に自分なりの定義を記す事にします。
定義
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文化(Culture)
定義: 文化は、特定の社会集団や共同体において共有される価値観、信念、習慣、伝統、言語、芸術、知識、そして行動規範や生活様式を含む広範な概念。これらは世代から世代へと伝えられ、社会のメンバーが一体感を持つための基盤を形成。
特徴:
・ 動的で進化する。
・ 地域や時代により異なる。
・ 個々の文化は他文化と相互作用し、影響を受ける。 -
芸術(Art)
定義: 芸術は、創造性と表現を通じて美や感情、思想、経験を伝える行為やその結果としての作品を指します。絵画、音楽、文学、舞踊、彫刻、映画、アニメ、ネットなど多岐にわたる。
特徴:
・ 主観性が強いため、評価や解釈は人によって異なる。
・ 芸術家が個人的な視点や社会的なメッセージを表現する手段。
・ 美学と技術の融合。
これらは情報が利用可能な範囲内での定義であり、文化や芸術の理解は文脈や時代の流れと共に変わり得ます。
文化と芸術の関係性分析
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文化が芸術を形成する
価値観と表現:
文化は社会の価値観や信念、歴史、伝統を反映する。
これらが芸術作品のテーマやスタイルに影響を与える。
例えば、日本の浮世絵は江戸時代の都市生活や美意識を描き、特定の文化的背景から生まれた芸術形式等。
コンテクスト:
文化的背景がアーティストの創造性を規定し、何が描かれ、どのように表現されるかを決定づける。
異なる文化では同じテーマでも全く異なるアプローチが取られる。 -
芸術が文化を形成する
文化の伝播:
芸術作品はその文化を他の地域や時代へ伝えるメディアであり、新たな文化的影響を生み出す。
例えば、ルネサンスの芸術は西洋の人文主義思想を広め、その後の文化的な発展に寄与する。
社会変革:
芸術は社会問題や政治的メッセージを表現し、文化的な議論を引き起こしたり、社会変革を促す。
20世紀の芸術運動(ダダイズムやサブカルチャーなど)がその一例。 -
相互作用
フィードバックループ:
芸術は文化から影響を受けつつも、同時に新たな文化的価値やスタイルを生み出す。
これは常に進化し続けるフィードバックループを形成。
グローバリゼーションの影響:
現代ではグローバル化により、異なる文化が交差し、結果として生まれる芸術は多文化主義を反映。
例えば、ヒップホップ音楽はアフリカ系アメリカ人の文化から始まり、全世界に広がり、ローカライズされた表現を見せる。 -
教育と保存
文化遺産:
芸術は文化遺産として保存され、次世代への教育や文化の継続させる手段となる。
博物館や美術館はこの役割を果たしている。
教育の手段:
芸術教育は文化理解を深める手段となり、文化的な多様性を尊重する価値観を育てる。
資料
昨年のAIRの事例を元にした資料です
“アート”による文化芸術を再考する