7月 22, 2024

展覧会を振り返って [後編]

2023年より自身のルーツに関するリサーチをする中で行った2つの展覧会に関する振り返りの記事となります。

展覧会を振り返って [後編]

前編からの続きとなりますので、まだの方は前編へを予め読んで頂きたく存じます。


AIRへ向けて

これまでの一連の流れで、柳川という場所が唐突に見えるかも知れないが、2023年1月の柳川でのグループ展の後にも、1年かけてリサーチを続けていた。

何故と思われるだろうが、ここにもルーツとの繋がりがあるのである。

高鳥居城での戦いの前、立花城を島津と共に攻め入っていた場所こそ、今の柳川であり、最後に吉実の首を取ったのも立花宗茂率いる立花軍の武士という因縁があったのである。

当初は、そういった因縁という負の側面から作品に出来るのかという部分で試行錯誤をしており、自身との関連性から作品を作ろうとしていた。

しかし、どうしても良い感情の方向にいかず、着目点の見直しが必要であったが、答えが見つからない日々が悶々と続きながらも、市職員が主催する船頭クラブに入って舟を操縦させてもらったり、舟の上からひたすら映像を撮ったりして過ごしていた。

当初から大河ドラマのような歴史絵巻のような映像を撮りたいと思ってて、人の演技というか舞踏の様な表現を取り入れたいと考えていた。

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その時、思いついたのは、以前、詩人であり、歴史・郷土史に詳しい前野りりえさんに紹介頂いた劇団池田商会の瀧本氏でした。
瀧本氏とは、調(星野)のルーツや筑後周辺の歴史についての取材という形で接点があったのだが、ふと、柳川のレジデンスの事を話したところ面白そうという事で参加頂ける事になったのである。本当に幸いだった。

AIRが教育委員会主催という事で、瀧本さんが顧問のクラーク高校の演劇部が主体となる演劇を今回のレジデンス作品の主軸にしようと考えたのだ。

しかし、どの様な内容にするかは定まってなく、城野氏と時間をかけ話し合った記憶が微かにある。

レジデンス開始

そんな中、2024年1月4日、年明け早々に、瀧本氏と城野氏と共に柳川へリサーチ及び取材を決行した。

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電車からそのまま柳川橋を通り京町通りの商店街を進むと、一見、花屋ではあるが看板は電激館というミスマッチに興味を惹かれて突撃したのである。

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その店の店主?であるゆみちゃんとの会話は興味深く(後のキーマンとなる)商店街の課題やら所感を語ってくれ、それを引き出したのは瀧本氏の軽快かつ懐にスッと入り溶け込んでいく話術によるものであった。

話終わってから店の外に出ると、目の前に良い感じのレンガ作りの建物が目に入った。
何故か一目で気に入ったその場所が、後の喫茶からたちであったのだが、その場ではどうしようもなく気になりながらも取材を続けた。

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その後、いくつかの店の主人と話したり、日吉神社辺りでのロケハンなどをして、8日からレジデンスに入る事になった。

柳川の綿貫家での生活は最初の1週間は生活に慣れる事に主眼をおき、その後、17日に暮らしつぐ会の集まりに参加する事に。(その集いで知り合った方々と協働して今回のプロジェクトを進める事になります)

皆で談笑する中で、ふと思い出したレンガ作りの建物の事を集まった方々に聞いてみたところ、商店街の理事長に話してくれるという方がいて、その方を通じて管理人と話が出来る機会を頂き、何とか趣旨を理解頂き、利用させて頂く許可を得たのである。

喫茶からたち以降

その後の流れは展覧会の概要にあるので割愛しますが(プロジェクト資料を参照)、商店街取分け喫茶からたちという地元に愛された喫茶という場の力と焦点を絞った事で、作品としての焦点も定まり、一度は途切れた記憶が再び甦り当時を知らない若い世代に記憶が繋がっていく事にも繋がり、商店街の抱える課題に対する解決のモデルの様なものまで提示するに至ったのは想定外の副産物でした。

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一つの出来事を創出したのは、プロジェクトメンバーであったかもですが、関わった皆が自分事としてアイデアを出し、足りないものを補うような形でたったの2週間という期間でスケルトンから喫茶店復活まで至れた事は誇りに思えます。

また、記憶の言葉を抽出し、演劇の手法でもあるエチュードを介して演劇を行えたのも、瀧本さん始めクラーク高校の演劇部の皆が真剣に取り組み、アイデアを積極的に出して頂けたからというのもあるし、からたちで生まれた言葉を現代の感覚に落とし込んで、社会課題や問題提起まで盛り込み発展させたシナリオや発想力は本当に見事だと思った。

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作家としては、極力"作らない"という意識で、ai使ったり人に任せるという形でマネージャー的な役割に徹していたのもあり、中々に困難で、最終的な展示はそれなりに手を動かしましたが、一つの展示に至る過程で、様々な人を介して展示に至る経験を得られた事は何よりも大切な糧となりそうだ。

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凡そ500年前の句から始まり、それを受け、更に次世代に継承していく一連の流れは、文字から始まり、イメージとして視覚化、その後記憶をテキスト化して演劇、最終的に演劇から抽出したセリフの文字そのものを表現として視覚化させるに至る。

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今後

何よりルーツである星野村や自分の音楽やセンス等に多大に影響与えたアイスランドでの展示も未だ達成させられてはいないので、これまでやってきた経験や手法を糧に、まだまだ旅は続くといった感じでルーツを探る作品制作も続けていく予定です。
一先ず直近としては、アイスランドでの展示を目指して、現地でのリサーチやギャラリーとの繋がりを持てるように、現地に行ってアタックしてこようかなといった感じです。
そちらは進展あり次第別途お知らせ致しますので、よろしくお願いします。